漆描家・色英一氏にプロジェクトのご相談をしてからおよそ1年半の年月を経て、
いよいよ飯椀の完成に至りました。
この記事に掲載している写真は、
昨年12月末あたり、20点の飯椀に5回ほどの下塗りを済ませたあとのタイミングに、経過を取材させていただいた時のものです。
ここからさらに、一点一点に数十回と、漆を塗っては研磨し、また漆を塗る、という工程が2月末あたりまで繰り返され、漆の定着のための養生期間を経ての完成です。
ここで改めて、なぜ、飯椀を木の器で、そして漆をほどこすものでとしたのかについて振り返ります。
喫禾了としては、お米をいただくその瞬間が一層幸せに感じられる器を目指しました。
木の温かなぬくもりや、経年変化による愛着を感じる器、そして、色英一氏によるデザインと仕事の美しさが融合された器、をイメージしスタートしました。
このイメージをはるかに上回る完成形に出会うことができました。
そして、制作工程を追いかけることにより、いかに漆をほどこす工程が繊細で、大変な手間がかけられているかを実感しました。
木と漆の器の特性について、以前、色英一氏にインタビューした内容をご紹介します。
喫禾了(以下喫):色さんは、なぜ「木と漆」の作品を制作されているのでしょうか。その魅力を教えてください。
色英一氏(以下色):万物は風化します。スピード感の違いはあれど、自分の手元で風化しないものは気持ちよく感じません。人間も自然界のもののひとつ。人が手をふれて使うことによる風化は、前向きな経年変化だと感じます。それがあるということ。
なぜ漆か、ということについては、漆以外の魅力的な選択肢がなかったからです。
自然塗料で、耐久性が高く、いろどりもあり、という魅力。人工物が悪いというわけではないですが、それよりも耐久性が漆のほうが高い。
喫:耐久性はそれほどに違いが出るのですか?
色:塗装をほどこさない木の器を使ったとすると、数回もてばよいほうで、すぐに割れてしまうと思います。
樽や桶などに塗装はしないのは、木の特性を生かすためです。樽の場合は、中に水を入れると木の収縮とゆがみが生じ、それを利用して水が漏れないようになっています。そういった木の特性を利用して家を建てたりもします。
毎日使う器となると、使う目的が違ってきますので、耐久性やゆがみの少なさは必要かと思います。
喫:漆器というと、扱いが難しいように感じる方も多いようですが、その点はいかがでしょうか。
色:たしかに、いくつか気をつけることがありますが、神経質になる必要はありません。むしろ、毎日使うのがいい。目をかけない、使わない、というのは、劣化に繋がります。
風化(経年変化)と劣化は違います。使わなければ長持ちする、ではないんです。
人間の身体も同じ。カラダも使わないと老朽化するのと同じように。
喫:劣化、とはどういう状態になるのですか?
色:使わずにいると、乾燥します。それが良くない。器の変形につながります。
喫:しまっておくのが大事にする、ということではないということですね。それ以外にも気をつけることはありますか?
色:使ったあと、洗うときは、普通に食器用洗剤とスポンジで洗っていただいて大丈夫ですが、スチールウールやたわし、硬いスポンジを使うと傷がつきやすいです。クレンザーや漂白剤も向きませんね。食洗器も避けてください。
100℃以上のものを入れると漆が白濁することがあります。ふつうにご飯や汁ものを入れるのであれば、そういったことはないと思いますが。
あと、紫外線に長くあたると色あせがおきることがあります。
喫:飯椀ですと、ご飯を食べた後に水につけるということも考えられますが、そのあたりはどうでしょう。
色:食べたあとに数分つけおきするくらいは問題ないです。何時間もつけっぱなし、となると影響があると思いますが。
喫:なるほど、お話を伺っていると、あまり神経質になる必要はなく、毎日使って手洗いをし、陽にさらされない食器棚にしまう、ということですね。大事なものであれば普通なことに感じますね。そして、大事な道具を持つということは、お米を大事にいただくことにも繋がりますね。
色英一氏は、「器をかわいがる」という表現もされていました。
毎日手に取り、愛でて、使う。
おいしいご飯をいただくための器こそ、愛着をもっていただけたらと思います。
喫禾了×色英一氏の飯椀、限定20点での制作です。
一点 33,000円(税込)で販売もいたします。
お問合せはインスタグラムの喫禾了アカウント @kikkaryo のメッセージまで。
まずは実物を見たいという方も、お気軽にメッセージくださいませ。。