11月某日、親しくさせていただいている料理人のみきさんと、スペインのお米研究をご一緒しました。
鎌倉を拠点に、スパイス料理をいろいろな形態でご提案されているみきさんから、
『スペインに来ていて、すごくたくさんお米の種類があるんだけど、帰国したら一緒にお米研究しない?』とヨーロッパからの一報が。
スペインといえば、パエリアなどのお米料理も有名ですから、それを現地のお米で試せるなんて、すごく貴重な機会です。
もちろんぜひとも!!!とお返しをして後日。。
日本のお米とは違うタイプのお米の数々!!
ここで、「料理の研究」というアプローチの仕方についてですが、『まずは伝統に基づく』というのが基本中の基本です。
はじめからアレンジしたりアイデア料理にしてしまうと、おいしく出来上がったとしても、素材の特長がつかめないまま、情報量が少なく終わってしまいます。
ということで、スペインのお料理でお米を使う伝統的なお料理を、できる範囲で徹底的に調べてみました。
50年近く前の書籍や、調理師学校の教本、それ以外にも4冊ほどの書籍を見比べて、4レシピを書き起こしてみました。
みきさんとも内容を打ち合わせ。
まずは、お米の種類による特徴を確認。
日本のお米と違って、炊くのではなくゆでるが基本。15分ほどゆでてみて味わいなどをチェック。
プチプチッとした食感があるね、もちっとしてるけどサラッとしているね、香りがおもしろいね、など、日本のお米にはないところを感じつつ、どのお料理にどれを使うかを決めました。
作ったのは、
■お米のサラダ
粘りのない長粒のお米が、白、赤、黒とミックスになっていて、それぞれ食感が違っているのがサラダにするととても美味しかったです。
お米はゆでて使うのですが、その時にビネガーと塩を加えるというのも勉強になりました。そこで下味をつけるとともに、雑味が除かれます。
具材はツナ、トマト、玉ねぎ、ピーマン、オリーブの実、ゆで卵、と、割と身近な食材。
日本のお米でも、ちょっと固めに炊いて洗って使うなどすれば、アレンジして作れるかも??
2品めは
■えびと貝と米のスープ
はまぐりをゆでた出汁をベースに、玉ねぎやにんにく、ハモンセラーノ(生ハム)を炒めてゆで卵も具材にするスープ。サフランの香りが絶妙で、ブイヤベースのような味わいでした。
お米が入ることで、まろやかな味わいになっていて、完成度の高い仕上がりになりました。日本のお米だと、もっともっちりとろみがついてしまいそうですが、さらっと具材としての役割になっているのが発見でした。
お米を使ったスープとしては、韓国のサムゲタンなどもありますが、煮込んだお米がうま味になり、まろやかさをプラスするというのは、お米の存在を活かしたとてもよい使い方だと思います。
ヨーロッパにもそういう使い方があるんだなーと感動しました。
ちなみにお米は洗わずにそのまま加えます。
3品めは
■鶏肉のスペイン風炊き込みご飯
本来は丸鶏を使うレシピでしたが、手に入りやすい鶏モモ肉を使って作りました。
お米は、日本のジャポニカ米に似た形の丸粒を選びましたが、粘りは出ずほろほろとした炊き上がり。
みきさんがスペインで仕入れてこられたグリーンピースの缶詰を提供いただき、スペインの味わいをプラスしつつ、
スパイスのパプリカパウダー、サフラン、フレッシュトマト、パンチェッタが入りました。
スペインのお米料理というと、パエリアのイメージが強くありますが、炊き込みご飯も食べられているんですね。
(パエリアは実は日常的にはあまり食べない、週末のごちそう、という記述もありました)
素材のうま味がぎゅっと凝縮していて、それがしみこんだお米がすごく美味しい。
日本の炊き込みご飯と違うのは、やはりお米の特徴の違いだと思うのですが、粘りや味わいが軽いのでどんどん食べれます(笑)
最後は
■ぶどうの葉のドルマ
こちらは、スペインからちょっと離れた、トルコ料理です。ぶどうの葉に味つけをしたお米を包んで炊くというお料理です。
たまたまぶどうの葉を入手していたので、異国のお米料理として試してみました。
本来は、ぶどうの葉は若葉を使って作るお料理のようで、トルコでは市場にたくさん並んでいるそうです。
使った葉は、ちょっと硬くなっていて、一緒に丸ごと食べるにはいまいちでしたが、香りがよくて、お米に香りを移す、という方法としてすごく面白かったです。
お米は、包む前に玉ねぎ、松の実、シナモン、オールスパイス、ディルなどと炒めて、葉に巻いたら、レモン汁と塩を加えた煮汁で煮ます。
ほのかに酸っぱくて、スパイスの香りとぶどうの葉の香りの組み合わせが興味深いお料理でした。
すべてお米を使ったお料理がそろいました。
みきさんから、きっと合うと思う!と、スペインのオレンジワインを提供いただき乾杯!
お米の世界は本当におもしろい!
日本だけでなく、海外の文化も研究対象になるなんて、とても深いですよね。
貴重な発見がたくさんありました☆