2022年の今夏は、ミーティングを兼ねた食事会やおもてなしに、鮎ご飯を何度か作りお出ししました。
今年何度か仕入れたのは、高知の四万十川と、岐阜の長良川の天然鮎でしたが、
それ以外にも、日本各地、鮎で知られる清流はたくさんあります。
日本各地の清流に育つ天然鮎は、それぞれ香りや味わい、身質などが違っていて、
背景にある自然環境をイメージさせれられる食材のひとつです。
はじめて天然鮎に触れたのは、もう20年くらい前の若かりし頃ですが、
「生臭くない」、「魚体からすいかの香りがする」、「はらわたもすべて食べるのがおいしい」
ということに心底びっくりして、その理由は、キレイな水質の川に育ち、そこに生える苔を食べているからなんですよ、
という説明を受けたことを、印象的に記憶しています。
友人を迎えての食事会を企画した今夏のある日。
市場を見て回ると、そこここに鮎が並んでいます。
天然ものでも産地はいろいろですし、養殖ものも型がよいのに価格は抑えめで魅力的です。
この日は、岐阜の長良川の天然鮎を仕入れました。
つややかで、やはり、すいかの香りがしています。
型は大きくはないですが身に張りがあって、黄色い斑点がかわいい。
鮎の塩焼きや天ぷらなどももちろんおいしいのですが、
塩焼きしてそのままご飯と炊き込む鮎ご飯も格別です。
米を洗って浸水し、その間に鮎に塩をして塩焼きに。
もうこのまま食べたい、という衝動を抑えながら・・・
酒と塩だけを加えて炊き上げます。
昆布や出汁、醤油などの調味料を使ってもおいしくできるのですが、
酒と塩だけだと、鮎の香りや味わいの魅力が、本当によくわかります。
薬味もこの間に刻んでおく。
ちなみにこの日のご飯炊きの鍋は、土鍋らしからぬ見た目のもの。
和風の土鍋のイメージからするとちょっとモダンなものを選びました。
この日のゲストはデザイナーをされている華やかな女性たち。
器のコーディネートは、フランスのアンティークと和食器を組み合わせてみました。
リクエストのあったほかのお料理とのバランスや、
テーブルを囲むゲストとのイメージが合うかどうかも大切にしています。
炊きあがったらテーブルに。
鮎の頭や骨などを丁寧にほぐしたら(これ、雑にやると口当たりが悪くなるので重要)
ご飯に戻して混ぜ込み、小葱を散らして。
「香ばしい香りとうま味がすごい。バターみたいなコク」
「ワタの苦味がほんのり上品で、苦みが苦手なのに全然食べられる!」
「身がふわっふわ!」
コメントもたくさん飛び出し、とても喜んでいただけました。
鮎は1年で一生を終えるお魚です。
川で卵から孵化したら、一度海に出て半年を過ごし、
川に戻って更に半年。
その川で過ごす期間、
5月~6月は稚鮎、若鮎、
7~8月はもっともおいしいとされる成熟期になり、
以後11月くらいまでは、子持ち鮎、落ち鮎として私たちはいただくことができます。
私たちがこんな風においしくいただくことができるのは、
健全な環境があってのことですし、
またさらに、たった1年の命の途中でいただいていることを知ると、
心からいただきますと、手を合わせる気持ちになったのでした。
またそれが、大事な人たちの笑顔につながるのも嬉しい。
鮎ご飯はまた来年★
■鮎ご飯
■米 2合
■鮎 4尾(塩を振り塩焼きにする)
A 水 360ml
A 清酒 大さじ1
A 塩 小さじ1/3
■小葱 適量