喫禾了では毎年、年に一度味噌仕込みを行っています。
喫禾了としてはまだ3年ほどですが、筆者が初めて味噌仕込みをしたのは16年ほど前。
そこからの試行錯誤です。
手前味噌で毎年おいしくいただくのですが、米糀、塩、大豆、というただこの3つの材料からなる米味噌の材料について、もっと知りたいと思ったのは必然でした。
特に今回は米糀について。
何度か仕入れ先を変えながら、行き着いた『片山商店さん』の米糀。
始めはネットで糀づくりのこだわりを拝見し、取り寄せをお願いしました。
ネットで注文というと、事務的な印象がありますが、注文後に一本のお電話をいただきました。
「いつ、何に使われますか?一番いい状態でお届けしたいので、お電話させていただきました」
片山商店のおかみさんから大変ご丁寧で温かなお電話でした。
そのお話に、糀づくりにかける想いの深さを感じつつ、実際に味噌を仕込んで、その美味しさを実感したのは、味噌が仕上がったおよそ9か月後。
毎日いただくお味噌汁、じんわりと深いうま味と甘みがこれまでになく最上でした。
お味噌をお分けした方々からも大好評で、「すごくおいしいんだけどなんで??」と。
それまでと変えたのは米糀だったので、その影響は確実だと思いました。
そこで、ぜひお話を伺いたいというお願いを快諾いただき、今年の3月に訪問が実現した新潟県新潟市の片山商店さん。
はじめてお会いしたにもかかわらず、やはりとても丁寧に、糀づくりについてお話くださいました。
片山商店三代目のご主人とおかみさん、お顔や雰囲気から伝わる温かさ。
糀づくりのこだわりをいろいろ伺い、見学もさせていただきました。
大きくは3つのこだわりについて。
地元新潟の契約農家さんから仕入れておられるコシヒカリ。
五つ星お米マイスターでもあられるご主人が選び、精米や保管にもこまやかに気を配ったお米が使われています。
そもそも本来、糀にはコシヒカリという品種を使うのはとても難しいそうです。
ねばりが強いので、糀菌をまくときにバラバラにする作業がしにくいとのこと。
それでもあえてコシヒカリを使うのは、故郷の味を生かしたいという想いと、
糀としてのうま味や甘みが生まれるのはコシヒカリという品種の影響もあるのではないかと想像しました。
「こも」とは、稲わらを並べて編み板状にしたもの。
糀菌をまぶしたお米を「へぎ」という容器に入れ、「こも」をかけて発酵します。
この「こも」を編む作業も手作業なのだそう。
「こも」の材料の稲わら
ものすごく手間がかかるこの作業をしても、やはり仕上がりの品質には代えられないのだとか。
温度や湿度の調整が繊細な糀づくりにおいて、天然の素材である「こも」と容器の「へぎ」が果たす役割は、熟練の糀づくりの技術とあいまった環境づくりなのだと感じました。
ちなみに、青いビニールで編まれているのは、万が一、糀に異物として混ざったとしても発見しやすいようにだそうです。糀は最終的に、虫眼鏡でこまかに異物チェックがなされるとのこと。
これで見るのよー、とおかみさん
糀は、徹底的に温度と湿度を管理された部屋でつくられますが、
「とにかく衛生的であることが大事」とのこと。
杉板で作れられた部屋は、長年使われているにもかかわらず、ひとつの黒ずみもなくピカピカ。湿度が高い部屋でカビがひとつも発生しないとは、とても難しいことだと思うのですが、
「毎週土曜日には、スタッフ総出で部屋を拭き上げるんですよ。」と。
生産量だけを重視していたらできない作業です。
ご主人に「片山商店さんの糀づくりはこんなに繊細なお仕事なんですね」と感想をお伝えしたところ、返ってきたのは、
「私はね、糀はつくるんじゃなくて、育てる、だと思っているんですよ。子供みたいなもんです」
というお言葉。
じんわりと染み入り、あぁこういう方々が生み出すものは間違いないだろうなと思ったひとときでした。
糀を顕微鏡で見せていただきました。
菌糸がかわいい★
※Instagramの喫禾了のアカウント@kikkaryoでは、new postのお知らせや、インスタライブを行っております。よかったらフォローもよろしくお願いいたします☆